王虹凱が台湾の音楽家・江文也をテーマにしたレクチャーパフォーマンス上演

王虹凱が台湾の音楽家・江文也をテーマにしたレクチャーパフォーマンス上演

王虹凱(ワン・ホンカイ)によるレクチャーパフォーマンス(写真:佐藤駿)

台北駐日経済文化代表処台湾文化センターは3月2日と3日、「シアター・コモンズ’19」を開催し、台湾のアーティスト・王虹凱(ワン・ホンカイ)が台湾出身の音楽家・江文也をモチーフにしたレクチャー・パフォーマンス「This is no country music」を上演し、「国家」という枠組みの狭間で紡がれた「国なき譜」を再現した。上演後、観客からは、「作品の中から江文也の音楽に対する熱意と未来に残した影響を感じ取ることができた」との感想が寄せられた。

江文也は、日本統治時代の台湾に生まれ、音楽家として日本で名を成し、1936年のベルリン・オリンピック芸術競技部門に交響曲「台湾舞曲」を出品し、「日本人」として入賞した。その後、中国で教鞭をとったが、戦後の冷戦や文化大革命により、台湾や日本に帰ることなく、中国で死去した。

今回、民族的特色がありながらもどこにも帰属を持たない江文也の音楽を表現するために「This is no country music」をテーマとし、台湾文化センターと日本の「芸術公社」が、音声から社会関係を探索する台湾のアーティスト・王虹凱氏に制作を依頼した。

王虹凱氏は、作曲または創作は聞こえてくる音の世界と切り離すことはできないとの考えにより、今年1月に台湾文化センターで創作ワークショップを開き、参加者らと江文也の音楽作品の「ミックステープ」を制作した。レクチャー・パフォーマンスでは、それを「聴く」、「読む」、「歌う」ことを通して、台湾・日本・中国が交錯する現代史に翻弄された江文也の国境、時代を超えた人生を表現した。

「シアター・コモンズ」は、2017年より台湾文化センター、ゲーテ・インスティトゥート東京ドイツ文化センター、アンスティチュ・フランセ日本、オランダ王国大使館が共同主催し、都市空間の中で新しい演劇の形を生み出す交流プロジェクト。演劇的想像力によって、異質なものや過去・現在・未来の複数の時間、空間、コミュニティが一つの空間に交わる体験を生み出している。観客の高い評価と日本政府の支持を得て、今年より東京都の「Tokyo Tokyo FESTIVAL」のイベントの一環として組み入れられた。


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